わすれられない日/石川敬大
 


 あの日は
 特別ではない日
 アニバーサルではない
 だれもが気にもとめない
 ただやりすごしてゆくだけの日
 デモ
 だれも触れない
 端折られた日なんてあるだろうか
 端折られた日
 カラ
 草が生えて
 名も知らない雑草が生えて
 頬をなぜるゆるやかな風が吹いて
 陽射しがふりそそいで……

 
 いつものように疲れて
 家に帰ったら
 くらい電灯のしたで
 あなたが泣いていた
 どうしたらいいのかわからない
 と
 あなたが泣いていた


 そのとき
 ぼくの風鈴がなって
 ぼくのセミがコロリと横たわって
 雨がふってきて……
 デモ
 アニバーサリなどではないけれど
 あの日は
 娘にも
 息子にも
 なにも語らない
 だれにも触れさせない
 ぼくのなかの
 わすれられない日



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