試験/山部 佳
 
曇った朝
「力、出すことだけ考えや」
車を降りる息子に声をかけた
「うんうん」
曖昧に頷きながら改札に消えた

重い病気で
1年を棒に振った彼は、ある日
「フリーター」、と自嘲して泣いた
TVでは同年のサッカー選手が
活躍するニュースが流れていた

どんよりした空から
ぽつり、ぽつりと雨が落ちてきた
降っては止む、中途半端な雨
いっそ土砂降りに、と…
父親と息子という模様

お前が生まれたときのこと
「男の子ですよー」
ピンクのユニフォームを着た看護師の
明るい声と一緒に笑顔になった
私は嬉しかった
月並みだが、待っていた男の子だったのだ

目の前の現実に流されて
夢をはぐらかせて、適当に生きてきた
情けない父親が言ってやれること
「燃え尽きてくれ」
現実に流されて
くすぶり続けないでくれ

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