あれかこれか/ハァモニィベル
** 1 **
それは、夜だった、し……
……それに、海は、嵐だった。
だが、――響く 、あの声。
(哀しく、美しい鳴き声)
――五色鶸のアリアよ。
五感の全てを、
支配した君が、
冷酷に微笑む夢。
幻影の激しい渦に、
しだいに、甘く溶け込むうち、
忘れてしまった〈僕〉が
ぼくを
また見つけ出す。
透き通った その手をのばし、
指を
こちらの方に突きつける。
寂しさに噛まれたまま、
嵐の夜ばかりが
打ち寄せる
波のように。
** 2 **
庭に潜む秘密は、知られては
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