屋根の上で何かが/春日線香
 
と思えば
寝ている間に喰われるのも仕方のないことではある
だが待てよ これはなんの変哲もない夢ではないか?
寝床から出て外を見やると特に変わったこともなくて
やっぱり不思議なことなんてないんだな と残念に思う
真っ暗な中 机の上の包みからりんごを取り出し
がぶっと一口齧ると りんごの芯にわたしが寝ていて
大きな口がむしゃむしゃと美味しそうに
食べていく それが真夜中の美術館の壁に
飾られた銅版画であることもわかっているのだけれど
ごおっと一際強い風が吹いて
屋根の上で何かが話をしているのだけれど
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