屋根の上で何かが/春日線香
風の強い真夜中
屋根の上で何かが話をしている
じゅくじゅくと泥を踏むような音が聞こえる
それがどんな存在の発する音なのか
そもそも生きているのか死んでいるのかもわからないが
寝ている耳には話し声なのだということがはっきりわかる
それはたしかに声であって 腐った茄子の化け物や
頭の大きな赤子が 風に吹かれているのかもしれない
じゅくじゅくと地上にえぐれた傷を覗きこんで
その中で眠りにつくわたしの頬をついばもうと狙っている
わたしの頬はとっくに崩れて 奥歯が覗いている
奥歯のすべてが親知らずになってしまって
外側を向いて生えている鬼の口で
きのうも茄子や赤子を喰ったのだ と思
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