路地にて/
春日線香
塀のそばをとぼとぼ歩く
五月のゆくえはただ次の季節を目指し
露を散らしたばらを放つように咲かせている
人はいない 付き添いの影だけで
影と影が二人で歩いているのか
葉陰の路地になにかが焼けた匂いなど嗅ぎながら
片足ずつ夢の水脈をかきわけていると
ものうげな男の子がしゃぼん玉を吹いて
ふと昇っていく球体が
音立てて割れる
詩は人の命より長く続く
詩は化外の空に届くかもしれない
森の奥から帰ってくる人を
迎えるために
この路地を抜けてゆく
戻る
編
削
Point
(3)