数式/草野春心
外国語で書かれた小説と 掃除の途中で放り出された電動ひげ剃り
その二つだけが あなたの部屋の丸テーブルに置かれていた
それらが如何なる数式を形づくっているのか 見定めようと 私は目を凝らす
生ごみと煙草と哲学と鬱陶しさの 避けがたい匂いが 台所の辺りに浮遊している
細長い 針金のような 朝、
見知らぬ誰かの手により 透明にされてしまったあなたが
何処かで私を見張っているのを 肌に感じながら 私は
目を凝らす その数式の中に 確かに 含まれている私自身に
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