自殺/山部 佳
 
飛行機と電車に乗って
室蘭に行った
廃墟になった古い製鉄所で
錆果てた鉄片を拾った

叩いて叩いて
錆を叩き落していると
手元を誤って
左手の親指をしたたか叩いた

激痛が襲い
爪は赤黒く変色した
右手を離れたハンマーはついでに
右足の甲に転落した

ちょちょぎれる涙
痛いのに零れる笑い顔
自分を嘲笑する笑い顔
鉄の匂いは血の匂い

この鉄片は
錆を落として加熱し
叩いて鍛えた後
きりりと研ぐのである

私はたぶん
こうやって短刀を作るために
残りの人生を費やすだろう

何のための短刀かというと
切腹するためである

「すいませんが
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