赤い沈黙/ユッカ
 
辞書で引いた、誰も知らない昔の言葉より
たった1人の
きみの名前が世界でいちばん美しいのに
今日こそすばらしいことを発明できるような気がして
また赤い日記帳を開いてしまうから
その白い空白が目に痛くて
涙が止まらなくなる

またひとつ、運命をなかったことにして
鳴らない鈴の音を一日に何度も聞いて
振り返っては自分の弱さに目を見開いて、動けなくなるのか


リンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリンリン

(うるせえなあ。)


緑の絵の具が空にあふれて
あたしの輪郭を奪い去ってくれそうで
木漏れ日ひとつに見とれて
足をとめてしまうのに

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