そういえば春は/はるな
 

そういえば春は
いつのまにか過ぎていた
楠のみどりの深さに溶けて

さえざえと曇る朝にまだなんとか
へばりついた春
雨戸をあける音に縮んで
すずらんの根元へ消えていく

ばらの蕾がふくらみきって
そういえばわたしも
思いだせないくらいわたしでした
咲いたのか枯れたのか
わからないまま身をふくらませて


戻る   Point(3)