そういえば春は/
はるな
そういえば春は
いつのまにか過ぎていた
楠のみどりの深さに溶けて
さえざえと曇る朝にまだなんとか
へばりついた春
雨戸をあける音に縮んで
すずらんの根元へ消えていく
ばらの蕾がふくらみきって
そういえばわたしも
思いだせないくらいわたしでした
咲いたのか枯れたのか
わからないまま身をふくらませて
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