五月のレター/ただのみきや
架空の手紙を書きました
咲いて間もなく突風に打たれ
瑞々しく散った桜のように
泣くでもなく微笑むでもなく
同じ景色の縛りの中で
そこはかとない諦念の香りに包まれて往く
ひとつのイメージへ
白紙の手紙を書きました
ぽろぽろと
明日からこぼれ落ち
黒い文字となって溶けて往く
互いのひとみを覗きこみ
そこに新たなそして懐かしい水源を見出して
渡って往くのだろうか
灰の翼よ
おのれの影を追うように
新緑は確かないのちを象り
風に揉まれて揺れている
光へ未来へと顏を向け
その翳りなき志向性は眩く
目を細めざるを得なくなり
そうしてひとりの滅び往く
イメージ ――わが同胞(はらから) わが淑女へ
手紙を書きたくなるのです
《五月のレター:2014年5月5日》
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