午前0時の黙祷/岡部淳太郎
 
滴らすことなく
彼等は血走った生活に身を浸す
固体の頑なさで 静かに狂う
やがて溶解して
さらには揮発して
自らも忘れられた者たちの仲間に加わってゆく

そして今夜 時計は明らかに動いている
ふたつの針はやがてひとときの抱擁にそっと安堵の息をつく
今日と明日の交接
一瞬にして引き裂かれる愛
その狭間に僕は立つ
誰を名指しするわけでもなく
気体の拡散で 思いを昇らせる
祈りを捧げる
それは今夜

時計は黙して語らない
時がどれだけ残されているのか 僕は知らない
僕は不純な魂
いまこの時の憂鬱は自らを越えて
改題された生を生き始める
重い夜を飛翔する
眼を閉じたままの 無言の歌
時は純白
世界はまたしても僕を忘れる

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