午前0時の黙祷/岡部淳太郎
 
今夜も 僕はほんの少しだけ世界を忘れる
飛び上がって
ひと思いに刺すことが出来ずに
沈みながら
血迷った逆流に身を躍らせる
時計は残された時を静かに刻み
やせおとろえた夜の下で
僕は僕の
呼吸を静かに整える

記憶をたどって
系図をさかのぼって
僕は弾き飛ばされた魂たちを呼び寄せる
人の想像によって汚され
自らの信仰によって浄められた
不純な魂たち
液体の密度で 彼等は穏やかに騒ぐ
これまでの淡い戦績をひもといても
歴史はよそよそしさとともに忘却される

今日も生命は憧れの汀を横這いに進んでいる
疑いもなく
決してたどりつくことなく
ひとつぶの水も滴ら
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