小説家と器〜ホーリーナイト〜/王
12月の寒空の下、ハンモックを並べて二人で凍えながら見えない星の話をする
そんなお伽話を書こうとした小説家は、師走の新宿東口の路上で酔い潰れ
体温を徐々に無くしていく間
何千ものパンプスやスニーカー、それにくたびれた革靴が通り過ぎ
揺り起こされることはなかった
濁ってしまった目で小説家は、刹那果てしないイルミネーションを見る
それは一度だけ行ったモンゴルの溢れる星空に思えて
圧倒的な宇宙に抱かれて
眠れ
ホーリーナイト
そして今僕の横にはやはり小さな死の器があって
ささやかな寝息をたてて、聖なる夜が過ぎる
その器は悲しみをとじこめたり、やさしい光を携えたりし
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