ひとつ 滲夜/木立 悟
 




くちびるに触れる鈴の粉
遠雷 器
雫と滴が
すれちがう径


ひとつのなかの無は増して
響きはさらに高くなる
窓の鉛 壁の銀
水の淵を照らす粉


分かれる前の大陸から
つづきつづける影があり
岩の陰の金色をすぎ
空の亀裂を指さしている


森を囲む森を囲み
雨は坂道をおりてゆく
ひとりまたひとりと集まり
何処かへ向かう子らを濡らす


蒼く白く
空は割れたままでいる
地に接する傾きを
数え切れない羽が昇る


火と火のはざまにある花が
じっと緑を鎮めている
汗と涙を持ち去るように
羽はそばをすぎてゆく


坂道をのぼる子ら
川のはじまりへ
花のみなもとへ
何かに急かされるように
歩いてゆく




















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