中野さん/ゴースト(無月野青馬)
 
行っても
人からは少年時の面影が透けて見えてしまうものだから
どんな人も憎めなくなってしまうけれど
血の染み付いたシャツをコートで隠しているのだから
本当ならもう少しきつい目を送られてもいいのだろうと思う中野さん
古本を読んだり、買ったりする中野さんは
手に入れた本は絶対に転売しない
手にめり込ませた本は、死後も売らないと決めている中野さん
空を視る
何処かで登山者が死ぬ
何処かで性交渉が
何処かで潜水艦が
何処かで赤い閃光に視界を覆われた少女が
何処かで破門者が
現代の裸の王様が
王様の家来達が
物語になっているかも知れない
中野さんは
自分が将来
読むことになるかも知れない物語を
想像している
ガルシア・マルケスのように
想像している
双子の星が輝いている






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