赤から青のメルヘン/ハァモニィベル
どうしてそんなに、大きなお口なの?
赤いずきんの少女は尋ねた。
それは至極妥当な疑問だった。
ペローならば、ぺろっとイカレ、グリムなら助かる運命の、幼気(いたいけ)な少女を、だが、もっとハルカニ混乱させたものは、何といっても、フロイトが、オオカミは父親だと言い、ユングは、母親だと言うことなのであった。しかし、いずれにしても、いま、目の前にいるのは恐ろしい狼。それ以外のナニモノでもないのだ、と少女は戦慄した。お気に入りの、この赤いずきんを、エーリッヒ・フロムに「月経の象徴」呼ばわりされたことも忘れるほどの恐怖であった。だが明らかに月経の象徴なのは、椿姫マグリットの5日間胸に咲く赤椿である、と。
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