八本のダフォディル/夏美かをる
 
だ笑いたいから笑っているんだね

そう言えば団地の横の花壇でも
同じ笑顔が並んでいたっけ?
確かそこでは水仙と呼ばれていたね

でもね、呼び名なんて多分どうでもいい
土と水と太陽さえあれば
地球のどこであっても
それぞれの場所で
すくすく伸びていくんだよ
ある時春の息吹を感じたら
真っ直ぐ前を向いて元気よく笑うためにね 
理由なんかなくったってさ!

 ―今日は“歩こう”の歌を歌ったんだよ。
  先生が面白いから楽しいんだよ―
 
あれあれ?
なんで土曜日に学校行かないといけないの?
なんで漢字なんか勉強しなきゃいけないの?
なんて涙溜めて駄々をこねて
母さんを困らせていた子はだあれ?

混沌としたこの大国の片隅にある
小さな日本語学校の、
生徒八人と先生が入れば一杯になっちゃう
二年生の教室にも
ようやく春がやって来たんだね
優しい光を全身に浴びながら
八本のダフォディル達が 大きな口を開けて
ただ一生懸命に歌っているよ

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