折れ曲がった空に/草野春心
その日 空は折れ曲がっていた
梯子の上ではくたびれた猫が
真昼の光を嫌になるほど浴びていたし
グラスに注いだ麦茶は埃を被りつつあった
忘れ物はのこさないでくれ
煙草ばかり吸っていた しけた部屋で
剥がしたポスターの痕みたいな
そんな顔をして微笑むのは
きみの退屈な恋人に向けてだけにしておいてくれ
テレビには 大嫌いな野球中継
中途半端な戦力差だが赤いユニフォームの方が勝ちそう
折れ曲がった空から送られてくる光たちは
その色や角度を少しずつ変えてはいるが
基本的に 誠実で
健全で
穏便そのもの
だからそんな顔をして微笑んでも
無駄なんだ 幾つになっても
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