前夜/カンノユウヤ
あしただね
あしただよ
そうは言ったって
特別なことばも思い浮かばず
あしたはやってくる
引退寸前のでんしゃが
えっちらおっちらと朝日を運んできて
ぼくらの決意はいったんおしまい
半日先に散らばった気持ちを
おいかける旅に出る
日保ちのわるい日記を読んでは
仕事と名付けて口に糊
気のきいたことも言えなくて
残業ばかりが積まれてくから
散らばった石ころを蹴とばして
河川敷のこどもになりきる帰り道
はかなしごとを胸に抱いて
こっそり夜更けを待っている……
窓のむこう
月のつぶつぶがきれいすぎて
忘れそうになるけれど
あしただね
あしただよ
いい加減爆発でもしそうな
カッコイイでんしゃに乗って
ホームで待ちぼうけてるあの気持ちを
むかえに行く旅に出る
……いつだって前夜です
はかなしごとを胸に抱いて
日保ちのわるい日記と生きる
ぶさいくな前夜です
特別なことばをつれて帰ったら
ぼくらの決意はいったんおしまい
月のつぶつぶが見えなくなって
「おやすみなさい、また明日。」
戻る 編 削 Point(2)