老人と水鳥/游月 昭
 


にわかに降りだした雨を背にうけ
老人は湖の畔を歩いている

大木の梢に目をやると一礼をして枝を折り
数枚の葉を丁寧にむしった

湖に向きなおり何かを見つめている
まもなく雨は上がり
水鳥が毛づくろいをはじめた

老人の背筋がのび
目は湖を越え、森を越え
見えない星まで届いていた



両腕が
上がる

獲物を狙う
猫のように
ゆっくりと

顔の前にきたところで
右手の枝が新しい命を得る
体は景色にとけ
枝はゆるやかに舞いはじめる


大木の葉がかすかに震えだし
風の音を奏でている

枝は大きく円を描き風にのる
地におりてい
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