「しまらない」/宇野康平
 
一年後に老衰する夫婦が踊る夜の公園。電灯の下。

寝る間に溶けた蝋は熱く、髪を焦がした。

壁に貼られたいかがわしい広告。消えた電話番号。

指先の振動は鍵盤を甘く動かし、ぼやけた声は耳の

鼓膜に舌をなぞる。労働者の足跡。

ああ、身からでた水を飲む。
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