めまぐるしくも/ただのみきや
 
昼下がり 
古いテニスコートを占領して
自転車の練習をする女の子
もうずい分上達したようで
ぎこちなくだが転びもせずに
不規則軌道を描いている
ヘルメットを被った人工衛星
昔は誰も被っていなかった そういえば
瘡蓋だらけの膝小僧で走り回る
そんな子供も今ではあまり見かけない
母親が少し離れた場所から見守っている
「止まる時は足からでなく ちゃんとブレーキかけてから 」
「おかあさんみて!できた!むずかしいけどできた! 」
 ――この春 初めて二十℃を越えた
桜はまだ タンポポも

宣愛(のあ)の練習を想い出す
わたしは何にでも厳しすぎたのだ
{ルビ選利矢=
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