聖徳太子/竜門勇気
たと思っていた私にもその威光は大きな衝撃を与えた。
「野生の聖徳太子だ・・・・・・」
言葉ならずつぶやいた言葉はいささか張り詰めた弦の響きとなって木々を打った。
己の言葉に驚いた私は残響のかすかな残り香を探すように後ろを振り返る。
私の背中を見守っていた森は非難するようにささやかに葉ずれの音を立てた。私の声はすでに捉えられない場所まで行ってしまっていた。
(ああ・・・禁忌なのだなあ。)視線を戻すと聖徳太子はもういない。紺の礼装だろうか、紫紺だったかもしれない。やけに鮮やかに、しかし朝露に溶けこむように見えて・・・
「ねえ、知ってる?」
背中が跳ねる。頬が凍る。頭の中にいばらが
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