わけがわからない程/ハァモニィベル
黒いサングラスをかけたカンガルーが、ライフルで狙ってる
その陶器製の、白くなめらかな母韻は、
ゴムのような口唇から何度も、何度も、
繰り返し発射されるから
執拗な子守唄に、もう寝付けない夜の―串刺―。
金属の耳についた鍵穴を施錠しても、
うたは・・・、なお、ポタポタと
耳に滴たり、
聞くほどに、聴くほどに、
尼僧が来るような気がして、
尼僧が来るような気がして、
寝付けなくなって、
夜の朦朧とした球形の世界を、眼球が駆けまわり
明け方が毛細血管を覗きに来るまでは、ただただ、
のっぺりと進捗する時間の絨毯の上で
手も脚もバンザイする仰向けのザムザ一匹。
庭では、颯爽と通過した風に、
拍手喝采する木樹の葉たち。
便器が咽せた大量の、罪と罰は、八分の遅刻。
急げ、いそげ。
わけがわからない程、通勤と通学の混じる路に、
現場に疾走る朝のダンプのゆく道に、
ただ、ヒッソリと、
〈世界を定義する〉権利が、
落ちている。
道端の、
コンピニのビニール袋の影に、
ぽつん、と。多分。
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