アグネシュカ 夜明けの森/石瀬琳々
 
夜明けの森を夢見た わたしの閉じたまぶたは
光によってひらかれる あなたの白い
春のような指さきで


わたしのためにあなたは生きていた
わたしが悲しいときははらはらと涙を流した
嬉しいときはあなたは花のように微笑んで
黄昏がさびしいと
水のきらめきが美しいとこころを痛める


光と影のようにいつも隣り合って過ごした
もうひとりのわたし
手をのばせば今すぐあなたに触れるだろう


すみれの花を抱えて途方にくれないように
花の匂いにむせてあなたを見失わないように
一心に森を駆け抜けた 生まれたばかりの足で


 (どこかで鐘が鳴り響く 耳の奥で

[次のページ]
戻る   Point(10)