透明な声/まーつん
 

 温もりを奪う

 そしてお前は、
 運び手にもなれる

 たとえば命を

 この星の初めに
 銀河が託した遺伝子を
 お前は海となって
 何億年も抱き続けた

 差し出されたら
 くるみ、溶かし、抱え込み、
 雲となり、雨となり、河となって
 この星の、あらゆる場所を旅して回り…
 そして必ず、私たちの元へと、還してくれる

 甘いものも、苦いものも

 杯に揺れる
 美酒となって
 忘却をもたらし

 頬を伝う涙となって
 悲しみを包みこみ

 土の染みとなって
 姿を消すお前、

 この世で最も
 柔らかな手触り


 水よ


 うだるような暑い
 夏の昼下がり

 何処かの家の
 蛇口から
 注がれるとき

 器に受ける
 者の耳に
 届くだろうか

 ただいま、と告げる


 お前の声が











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