透明な声/まーつん
 
 水は、万象の旅人

 生き物の身体は
 彼等の泊まる、仮の宿

 水よ

 お前が
 笑いさざめくのは
 春の林床に降り注ぎ
 小川を結び、走るとき

 お前が
 咳き込み咽るのは
 都市の隘路に迷い込み
 産業の垢に、塗れるとき

 お前が
 居住まいを正すのは
 ついと木の葉の縁を伝い
 乾いた舌に、降り立つとき

 命を育む羊水として
 母の胎に波打ち

 黄泉への導きとして
 溺れる者の肺腑を満たし

 聖なる清め手として
 信ずる者の頭を濡らし
 穢れを洗い落とす、水

 そう、お前は
 とことんまで
 汚れることもで
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