羊の影/草野春心
 


  羊の影が
  小径を歩いて行くのがみえた
  人も居らず ごみばかり落ちている
  その小径は雨の臭いに満ちていて
  もう
  まもなく、
  日暮れが訪れる
  マフラーを巻いた
  四十がらみの女が一人、
  並びの三階の窓から顔だけ出し
  地を這い壁を伝う羊の影を 目で追っている
  昔の歌を思いだそうとするように
  ほそい眉をひそかにしかめて



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