文明開化の音を探す/煙と工場
とある屋台に座ると
目録には
ラーメン
日本酒
ビール
そういったものの他に
月
があって
「この月はなんですか」
と聞いたら
真っ黒などんぶりに
水を並々とそそがれて
「外に出てみるといいよ」
と言った
(なるほど風流ですな
どんぶりに月をうつせば
いいわけだ)
外に出てみれば
目の前には
最近建てられたと思しき
高層ビルがあって
そこから光がうっすらと
出ているだけで
月なんてありはしなかった
僕はおろおろして
振り返れば
屋台は消えていて
僕はといえば
どんぶりかかえて
阿呆な姿
狐に化かされたか
どうかは知らないが
水の表面には
「ツキのない夜もある」
という下手な文字が
ゆれていた
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