岐路/ヒヤシンス
屋根裏の小部屋の窓から、表の世界を眺める。
そこには、競争があり、強奪があり、また征服があった。
人生の秘密は悉く暴露されていた。
私は頭では当然の事だと思いながらも、心は深く病んでいた。
静かな湖面に投げつけた石が波紋を広げるかのように。
翳りゆく町の中で街路樹の葉もその生命を終えて朽ちてゆく。
今の私は、愛においては傍観者であり、優しさにおいては偽善者であった。
自分の存在を見失わないよう必死に現実の灯火を消すまいと努力している。(努力とは?)
現実を生きる為にこそ現実の中へ逃げ込もうとしている私に、
憂鬱をのせた春の風は生ぬるく、その思考をたわませる。
屋根
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