コウフクノモノサシ/ただのみきや
 

ホトトギスほどの塊が
暗い軒下に落ちました
痞えたみたい 喉に 冷たく

沸々とあちらこちらから
背中をなぞる泡の囁きに
計れない量れない図れない
魔物デスノヨ幸福ハ
解されない一塊の肉の方程式 
生活の生恥部切開針千本嫌々ヤメテ!
いのちの逆回転に吸いこまれながら
世間様の横顔 抜き足で駆け足
椅子のない椅子取りゲームから
赤ん坊だけは方舟に乗せろ

サボテンのように微笑む真っ赤な嘘だねきみは
忙しなく吠え立てる人や犬や
こんな埃っぽいグルグルに
カマキリの敬虔な静謐 やがて
真白く破れる一瞬に
幸福しませう!
ひと垂らしの眩暈を燻らしながら
首から齧って頭の中へ


      《コウフクノモノサシ:2014年3月29日》





戻る   Point(17)