「曇っては晴れて」/宇野康平
 
視力が弱り輪郭がボヤケタ月も美しい。

あの日、遺影のそば、泣いた女。

消えた気配。亡くなった子供。



あの日、頬に触れた赤。

伝う水は、裂め目から漏れ。



曇っては晴れて、

曇っては晴れて。

聴力が弱り聞こえた声は。
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