どうであれ、春は/
モリー
今日はマスカラを買った
化粧に疎い私のささやかな武器
紫の容器がギラついている
「自分らしさ」という言葉を
あなたは毛嫌いしていたけれど
それ無しの恋など、成りようがない
額をさらして歯を磨いている私に
「僕にだけ、その顔を見せて」と話した声を
そっとなぞるように、思い出す
どうであれ、春は
私の身体をじわじわと温め
次の季節へと背中を押している
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