旅の写真/山部 佳
 
知らぬ間に妻が撮ってあった
私の写真が私を驚かす

知らぬ間に白髪頭の
頼りなげな初老の男が
否応なくしょぼくれた様子で
サンジェルマン大通の店のウインドウ越しに
チョコレイトやらマカロンやらを眺めている
哀しみを通り越してすでに
漫才の領域に達している
つまり
私は漫才を観て笑うのではなく
泣いているのだ
そのことに気づかせてくれる写真

そのまま
あるがまま
いつか霧が晴れたら
Bの鉛筆を使って
自画像を描いてみたい
しょぼくれ尽くすのである
やがて太陽が赤色巨星になり
超放射性のガスを放出して
白色矮星になるのと同じように
しょぼくれ尽くして収縮するのである

高密度に凝縮した私は
その身を包む靄に光を与えて
再び輝けるかもしれない…
レンブラントはそれを
知っていたのかもしれない

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