古い蝉/
草野春心
古い蝉が、この部屋の
窓に貼付いて乾いている
色々なものが置かれていたが
結局ひとつもとどまらなかった
きょうの月は、頼み方しだいでは
ベランダに降りてきてくれそうな月だが
わたしはここを出ていく
わたしは 今夜 ここを出ていく
あなたの歯形のついた風を 右頬にそっとうけて
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