「影がかかったコンクリート」/
宇野康平
駅舎。
指名手配犯の絵図を三人の子供が見ていた。
koroshitaruと冷たい手で顔を覆い笑う。
指差して後ろの老婆は体を斜めに涙を流していた。
影がかかったコンクリート。雨は甘くお前を溶かし。
影がかかったコンクリート。陽は薄くお前を削り。
影がかかったコンクリート。風はお前を土に還した。
幾度、ヨチヨチ歩きをしたご老人が前を通る。
幾度、目を閉じて笑う。
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