山羊を見る羊/クナリ
 


いつでもどこでもつながっていて、いることがあたりまえの、誰かの人格。
その人格が、能動的にネットワークに接続することをやめただけで、
生存の確認さえ不可能になる。
柵の中にわざわざ入るのをやめたその人に、声を届ける方法がない。
柵が不必要になった人には、柵の中の連中さえも不必要となるのか。
僕も私もその他も。

あの人は白い山羊だった。
実に軽やか。柵の中にいることもできる。ぷいと出て行くこともできる。
我ら羊、羊。

寂しいのう、寂しいのう。
求められていたいのう。
肉体だのしがらみだの、挟雑物のある世界では見えない、純粋な自分の価値を、
認めてくれる人に
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