後の祭り/なをり
ら僕、おります。」
おお、と車内で拍手が沸き起こった。僕はいちばん後ろの席から立ち上がり、バスを降りた。僕は適当な人たちが嫌いだと思った。
高架下には赤い提灯をさげた立ち飲み屋が地平線の果てまで並び、僕がかつて行きそびれたすべての文化祭をやっていた。
そこで武藤と会った。
中学のときはつまらないことで関係がぎくしゃくしていたけど、それは僕の思い過ごしだったらしい。武藤は朗々としている。折り紙の輪っかを綴ったものを首から下げていた。
「みんな変なことばっかりしてるから、夢かとおもっちゃった。」
「夢じゃないよ。祭りだから。ぜんぶあまりまくってる。」
「女もあまってるの?」
別に興味ないけどきいた。
「あまってる。」
「じゃあ綺麗なおばさんで車をつくりたいんだけど……。」
こんな感じ、とジェスチャーした僕の指が武藤の口に入って、武藤が汚ねっと言った。僕らは地面から突き出ている蛇口で手を洗った。
僕は段々楽しくなってきて、涙がでそうになった。
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