1960/山部 佳
 
レールは、強い日差しに過熱している

煤けた少年が、レールの上を歩いて
線路脇には、赤いカンナが咲いている
熱いレールに耳を当てると、ことんことんと
走り去った列車の鼓動が遠ざかる

列車の窓が通り過ぎる瞬間
白い帽子を被った少女を見た
少年は手にミルク色のビー玉を握り締め
ポケットのパチンコに触れた

黒い河の面には、あぶくが浮いては消え
どろんと、霞んだ太陽がゆらゆら揺れる
ゆったりと、流れ来る油膜が
不思議な形の虹を作っては去っていく

隣の家はパンスケのおばさんだ
市駅の裏の暗がりで商売をしている
しやからちょっと金回りがええんや と、
羨む女たちは
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