クラクフ/山部 佳
 


もう峠は越えているのだよ
風は無言で運び去る
過去の方角にむかって
風にひとりごと

母の子宮で着床した時から
聞こえていたのは
私の棺に釘を打つ音
身の丈にあったやすらぎをくれる

遠い鉄路の響きが聞こえる石炭の燃える煙
茶色い扉に向かってまっすぐに伸びた線路に
無数の靴が

遠い鉄路の響きと汽笛の音は
すでに私の道が下り坂になっていることを
教えるのだ

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