クラクフ/
山部 佳
もう峠は越えているのだよ
風は無言で運び去る
過去の方角にむかって
風にひとりごと
母の子宮で着床した時から
聞こえていたのは
私の棺に釘を打つ音
身の丈にあったやすらぎをくれる
遠い鉄路の響きが聞こえる石炭の燃える煙
茶色い扉に向かってまっすぐに伸びた線路に
無数の靴が
遠い鉄路の響きと汽笛の音は
すでに私の道が下り坂になっていることを
教えるのだ
戻る
編
削
Point
(2)