現代詩の彷徨/ハァモニィベル
 
棒を振りかざすような愚とは無縁で、眼光鋭く、「きわどい形式ではあるが」と前置きしたうえで、 ・・・・そこで、おや、待てよと、ここで紹介された2冊の書物を確認しなくては、と思い立ち、あらゆる詩の書籍が揃った書斎の棚を探し始めたのだった。
 風博士はいつもそうであるように気狂ともいえる奇矯さで、しかし独特のリズムをともなった作業へとりかかった。
 膨大な書物をちぎっては投げるように、これでも無い、これでも無い、と後ろへつぎつぎに放り投げ、まるでゲラゲラ笑うように口元をゆるめた分厚い本たちが、次から次へと宙に舞い上がるジャグリングの嵐舞を、当の博士は一向気に留める様子もなく、一心に目的の本探しに夢中である。そのリズムと、言い知れぬ不可解な余韻が何か日常でない不条理までもこちらに投げつけてくるが、博士の方は探せども探せども、楽にならず、目当てのモノはまったくみつからない様子で、そのうち、よくよくよく見たら!風博士の姿自体リズムの他はどこにも見えない。





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