現代詩の彷徨/ハァモニィベル
 
らせられるからこそ苦慮せられたのだと思料する。[現代詩の口語訳]の比類なき権威として、多忙を極め続けながらも、なんと、なんと、尊いことであろう、博士は僅かな1阿頼耶ほどの手抜きも、微かな1阿摩羅ほどの妥協すらも良心がゆるさぬ性格(たち)である。今回、学生たちに課した課題の評価は、至極、至極、簡単なもののはずだった。課題は、ただ、単に、現代詩を創って提出せよ、と、ただそれだけだったのだから。それが

 それが、一人の学生が提出してきたこの[詩と称するもの]が、天才である博士を、否、博士の天才を、さらさらと光を溢(こぼ)す夏の夜の太陽のような博士の叡智を、手術室でケツを突き出す辛子色のプードルのよ
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