現代詩の彷徨/ハァモニィベル
 
 窓の外で詠う小鳥たちの可憐な魂の囀りに付き添われて夕陽が、いま、音と光といっせいに、開け放った窓から目を細めたくなるほど染み込んでくる。西欧風の苦い焦茶で統一されたこの書斎の奥のほうまで、燃え潤んだオレンヂが浸たすと、一番奥にある傷だらけの棚に置かれた古いアルバムも、降り積もった埃と共に一層懐かしい色へと染まるのだった。

 その部屋の中でいま、何やら呻くような風が動いた――。

 博士は今、最後の1枚に苦慮していた、学生が提出したレポートの評価に足の小指をぶつけたように。
 学生の提出したレポートなど、たちどころに処理してしまう博士の天才をもってしても、否、否、偉大なる天才であらせ
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