不思議な本の女の子/最都 優
 
眼鏡を外したら
綺麗ですね

そんなことも言えなくなってしまった自分は
なんて奥手なんだろうって思う

本を片隅に置いて
その子は
目をくりくりさせて
チラシを見ている

詩を読んでいる
声が聞こえるなかで
その子は
不思議な空間を作っていた

「お酒を頂戴!」
なんて片隅に
見えない簑で覆った空間

その子は本を読んでいた

たまに行くようになって
たまにいる
そんな
その子が
僕には不思議でしか仕方がない

でも、
変に話し掛けたら
きっと邪魔をしてしまう
そう思い
シャイの虫につつかれている

詩を読んでいる
声がする
その子の周りだけは
時が止まっている

不思議な子
本の女の子

僕は名前も
知らないその子を
そう呼ぶことにした

本の女の子
不思議な子

今も本を読んでいるのだろうか
その子が
最初に読んでいた詩が
断片的に浮かぶ

中身がどうしても思い出せない
何か引っ掛かったモヤモヤ
次はその詩をもう一度
もう一度だけ
聞けないかな
聞きたいな

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