【HHM2参加作品】「旅立つということについて」小林青ヰ/そらの珊瑚
 
って生きている喜びを叫ぶのである。
ムルソーの綴りはMersault。le soleilは仏語で太陽という意味で、saultはそれを暗喩させるともいわれているらしい。
はからずも、この詩においても太陽が大きな舞台装置となっていることは、何がしかの共通項を感じさせる。

しかし本詩の記述は「くびにあらなわをまかれて」ではなくて「あらなわをまいて」なのである。
まいたのは、自分というふうに捉える方が極めて自然だろう。
「あらなわ」とは生きていく以上いやがおうでも社会に帰属しなければない、ということを象徴しているのかもしれない。
真の意味での異邦人にはなかなかなれるものではないだろう。

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