【HHM2参加作品】「旅立つということについて」小林青ヰ/そらの珊瑚
ぼくたちは心ならずも死んでゆく
くびにあらなわをまいて
生きることに急いだ} (全文)
一連目の『灯ろう』がひとつのキーワードとなった時代めいた叙情が二連目、夜が明けてがらりと一変する。
ゆるりとした空気が一瞬でぴいんと張り詰めるとでもいおうか。
「心ならずも死んでゆく」
この一文は表題の『旅立つ』ということに重なるものであろう。
人は不条理を生きている。
今ある生はひとつ残らず死にむかっているのだから。
それならば。生きるということの意味はなんなのだろう。
この詩で示されている大きなキーワードは『あらなわ』だと思う。
――あらなわ、荒く編んだ縄。何か
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