ホテル ハット・ウォールデン/鵜飼千代子

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ホテルの窓辺が大好きなので
窓の外を見ながら
両手のひらをじっと見る
ネイルアートなどする隙のない
生活の手だ
*
「お夕食のお時間です。」
フロントから電話が来るまで
至福の時の窓際族を楽しむ
背中には安心がある
レストラン ネストに行ったら
あらかじめ
「半分にしてください」と
お願いしていた
楽しみのディナーをいただくのだ
「食べ残す」ことへの恐怖を受け入れてくれた
レストラン ネストで
*
ハット・ウォールデンの階段を駆け上がり
「ただいま〜」と
チェックインするのがとても好きだった
こころはいつも この窓辺に戻る
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