ホテル ハット・ウォールデン/鵜飼千代子
 




はじめて宿泊した日は
洗いざらしのシャツとジーンズで
いつ帰るか予定のないひとり旅だった
大きなリュックを背負い
フロントまでの階段を登った



しばらくして
宅急便で荷物をホテルに送っていて
部屋までバッグを運んでくれたフロントに
届いている荷物を伝えられたあと
その段ボールにお土産を仕込んでいたのか、
いつもの癖で
爪で段ボールのガムテープを開けようとした

「ルームキーを貸していただけますか?爪が痛みます。」

言われるままにルームキーを渡して
手元を見ていた

段ボールは開いて用事は済んで、
フロントマンは部屋を出ていった


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