博識/ユッカ
 
桜が咲いたねとか
空気が湿っているねとか
そういうことを言って、世界を楽しんだふりをして
あらゆるものを知ったかぶって
ほとんどのものをとり零しながら生きている


「梅よりも桜のほうが春っぽい
派手だから」
そんな風に断定する
春を定義する
きみは世界一、博識さ


指の隙間をさらさらと流れていく
その手触りすら、楽しむような身軽さで


綺麗だね

なんて

言うから


時には言葉に力がこもらずに
感情だけが空回りして、溢れていく
そうして勝手に傷ついては
自分じゃない誰かに愛をねだって
泣きつかれて眠ったりするんだろう
ほんとにさあ
きみはいつまでたっても、そんなだね



だから嫌なんだ
きみといると走ってしまいそうになる
桜が綺麗だねとか
空気が湿っているねとか
そんな他愛無い言葉に満たされて
走り出してしまいそうだよ
そうしたらきみはいつものように
「世界には何一つ、大変なことなんてない」とか、言うんだろう
知ってるよ
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